当年度事業計画

令和5年度事業計画

Ⅰ.造水技術に関する研究開発事業
Ⅱ.造水に関する調査研究事業
Ⅲ.造水に関する普及啓発事業
Ⅳ. 造水に関する研修事業
Ⅴ.その他事業
Ⅵ.会務及び技術普及・広報事業

Ⅰ.造水技術に関する研究開発事業(公益)                              

 

 研究開発事業に分類される事業は、いくつか計画をしているが、公募等で採択された事業を実施する。 


Ⅱ.造水に関する調査研究事業(公益)                                                    

                                                    

1.海外地下水の処理技術の調査
   海外における河川水水質悪化、水量の減少に伴い、代替水源としての地下水利用に向けて汚染物質や塩分等の処理が必要となっている。本事業はこれら地下水の利用目的に応じた処理技術の調査・検討を行うものである。

 

2.再生水処理技術の信頼性評価に関する標準化活動 
 本事業は、ISO/TC282「水再利用」(TC:専門委員会)の分野で、日本が強みとする再生水製造システムやそれを構成する水処理技術の性能評価方法等を国際規格として開発することにより、技術・製品の差別化を容易とし、水インフラ輸出の優位な展開に貢献するものである。水インフラの新たな市場を形成するとともに、システムやその構成製品である製造装置等の拡販に繋がり、それに伴う省エネ効果の拡大や地球温暖化対策に資するものと期待される。

 平成26年度から開始された事業の中で、日本の提案による性能評価規格である「再生水処理技術ガイドライン」のPart 1~Part 8のシリーズ規格の開発を進めてきた。その結果、Part 1(一般概念)、及びPart 2(システムの環境性能評価)を、IS(国際規格)として発行した。また、システムを構成するオゾン処理、紫外線消毒、膜ろ過、イオン交換の4技術の性能評価規格について、Part 3~Part 6として関係企業や各協会と協力してドラフトの作成を進め、令和3年度までにISとして発行した。さらに、Part 8(経済性評価)として、処理技術の経済性をライフサイクルコスト(LCC)で評価する規格についても開発を進めてきた。なお、Part 7は韓国提案による促進酸化処理(AOP)の技術に関する規格である。

 令和4年度は、Part 8(経済性評価)のIS 発行を完了するとともに、Part 10(信頼性評価)として、システムが故障なく長期間処理目標を満足する性能を評価する規格についてドラフトの作成を進めた。Part 10を新規作業項目として提案した結果、各国による投票で採択された。規格開発にあたっては、性能評価指標や評価方法の妥当性の裏付けとするため、ウォータープラザ北九州を活用し、再生水の水質リスク低減や省エネ効果、性能の安定性に関する実証データを引続き取得した。なお、国土交通省が国内審議団体を行うISO/TC282の専門委員会とも連携した活動を行った。

 令和5年度は、Part 10(信頼性評価)のドラフト改訂をさらに進める予定である。

 本事業は、外部からの委託事業として実施するものである。

 

3.省エネを実現する水処理再生膜のグレード分類に関する国際標準化活動

 本事業は、使用済みの水処理膜を再生した再利用膜を性能によってグレード付けをする国際規格を開発するものである。これにより、性能に優劣のある再利用膜に適正な評価を与え、再利用膜の新たな市場創出に資するとともに、品質の良い日本製膜の差別化を図ることを目的としている。

省エネ効果に関しては、新膜の製造に比べて使用済み膜の再生工程に関わるCO2排出量は非常に少なく、また、膜の再利用促進は、膜の廃棄を減らし、廃棄工程に関わるCO2排出量も削減されるなど大きな効果がある。それは、水処理業界としての環境保全やSDGsのアピールにもなる。

 令和4年度で3か年の活動は終了し、令和5年度から新たな案件として、この規格の開発を継続する。前年度に引き続き再利用膜の性能確認試験をウォータープラザ北九州などの設備で実施し、ISOでの規格案(Working Draft)の承認を目指す。

 本事業は、外部からの委託事業として実施するものである。

 

 

4.水再利用の国際標準化に係わる支援業務

 本事業は、TC282(水の再利用)SC3(リスクと性能評価)の事務局活動を支援し、国際標準化や国際会議への対処方針案等とともに、標準規格の普及に向けた活用方策を検討することで、水分野における本邦優位技術の国際展開を促進する。具体的には、国内関連団体が主体に進める規格開発や、他国提案による開発規格に関する情報を国内の関係者に共有して意見を求めることにより、規格内容の改善、規格間の不整合をなくす調整について提案する。また、本邦の技術提供者や、アセアン国など市場国関係者による規格の活用を促進するための方策も検討する。

 本事業は、外部からの委託事業として実施するものである。

 

 

5.水の効率運用評価指標の普及促進に向けた調査

 本事業は、水使用に関する世界的な動向を踏まえ、工場等における水使用に関して適正な評価がなされるよう、水使用合理化の効果を評価する新たな手法の確立と普及促進を目指すものである。

 本事業では、世界に通用する指標とすべくウォーターフットプリント(WF)の考え方を応用し、かつ工場(対象)での水使用にフォーカスした、造水促進センターが提唱する『工場(対象)を製品と見立てたWF的検討手法』の考え方に基づき様々なケースでの適用事例検討を積み重ね、その結果をもって指標としての提案を行うものである。

 本事業に先立ち実施した、電子部品製造工場、自動車部品製造工場及び石炭火力発電所等に対する検討では、水の合理化対策や操業の効率化あるいは回収処理システムの違いによる環境影響低減効果を適確に捉え、数値として見える化して示すことができ、本新指標が対象とする工場等の水使用に係る適切な評価に大いに有効であることを示すことができた。

 本事業では、本新指標についての課題等の抽出を図るとともに、適用事例検討を重ねて適用のための各種様態の事例の充実を図り、さらに水効率管理の国際認証規格であるISO46001等の動向を踏まえた検討を進めることにより、当該新指標の普及促進を図ることを目指す。

 令和5年度は、事例検討対象として、水使用状況が上記業種・対象と異なる事例を選定し、当該対象について水使用合理化対策の有無による効果の差異を環境負荷として捉え、本指標の有効性を検証する。

 本事業は、本財団の自主事業として実施するものである。

 

 

6. 海外工業生産における水利用の国際規格開発

 本事業は、平成28年度から開始し、海外での工業生産活動に関係するTC224/WG12「水効率管理」やTC8/SC13/WG3「海水淡水化」について国際規格の開発動向を把握し、改善や活用に関する提案をするものである。特に、開発される規格が、日本企業の生産活動に不利益を生じることなく、また、優れた水利用技術が適正に評価されるよう、規格内容の改善や活用提案を行う。

 「水効率管理」は、シンガポールが、国内で2013年(平成25年)から施行しているSS577規格をベースに、認証付きの国際規格をめざして提案したもので、各事業所による節水を目的に、継続的に目標設定、計画、実行、見直しを義務付けるものである。その手段となる水再利用については、TC282「水再利用」の規格を参考にできる旨の追加を日本から提案した。本規格は、令和元年7月に認証規格としてIS(国際規格)発行され、主にシンガポール国内で活用・運用が始まっている。また「海水淡水化」は、中国の提案により開発が進められた「生産水の水質」に関するガイドラインが令和3年10月にIS発行された。これは、当初から国内関係者と共同して日本からコメントを提案し、不都合を排除した規格としたものである。

 令和4年度は、引続き「水効率管理」の認証規格の活用・運用動向を把握するとともに、国内の関連団体と情報共有し、関連する水再利用に関する規格や技術の活用につなげるための調査を進めた。また「海水淡水化」は、さらに中国から「用語定義」に関する規格案が提案されたため、関係者と共同し内容を改善するためのコメント提出を検討した。

 令和5年度も、引続き「水効率管理」と「海水淡水化」の規格の開発、活用に関する調査、検討を進める予定である。

 本事業は、本財団の自主事業として実施するものである。


[ページTOPへ戻る]


Ⅲ.造水に関する普及啓発事業(公益)                                                    

 

1.国内外への造水技術の普及促進活動    
 近年、世界的に水不足、水質の悪化などの水に関する問題が発生している。

そこでこれらの課題に対して、これまでに本財団が蓄積してきた各種の造水技術に関する情報発信を行い、国内外に普及・促進するとともに、日本の企業の海外への水ビジネス展開に寄与することを目的としている。

 令和5年度は、下記の事業を実施する。

 (1) 英語版及び日本語版造水技術データベースの修正、追加を実施して、情報発信を行う。

 (2) 国内外の水関連国際会議、展示会、シンポジウム等に積極的に参加して造水技術に関する普及促進を行う。

 (3) 日本の造水技術を紹介するため、国内外に職員等を派遣し、水に関する情報収集を行い、造水技術の普及促進を図る。

 本事業は、本財団の自主事業として実施するものである。

 

 

2.AI、IOTなどを用いた最新の水処理技術の動向に関するセミナー

 近年地球環境が大きく変化してきており、SDGsの目標では、2030年までに、水・衛生向上のための再生水利用への取り組みの拡大等を図ることとされているが、2022年の国連報告書によるとGoal:6「すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」の進捗状況では、非常に厳しい取り組みが求められている。

 本事業は、水処理システムの操作におけるAI(人工知能)やIoT(Internet of Things)といったテクノロジーの導入が今後進むことが見込まれ、水処理技術分野のシステムにAI、IoT、DXなどを用いたソフトテクノロジーである電子情報への取り組みはSDGsへの貢献が非常に大きいと考えられことから、これらの最新情報に関してのセミナーを東京で開催し、会場とWebで同時配信する。

講師及び講演テーマに関しては、大学教授他学識経験者、企業担当者による実用例の講演を行う。

 本事業は、本財団の自主事業として実施するものである。

 

3.ウォータープラザ北九州施設の活用に向けた運用管理・広報活動業務

 本事業は、令和4年度に北九州市との「ウォータープラザ北九州」のデモプラントとテストベッドを運用する基本協定締結に基づいて実施するものである。

令和5年度も引き続き、北九州市が所有する「ウォータープラザ北九州」の施設の運用管理を行うとともに、下水の膜分離活性汚泥装置(MBR)の省エネ化を目指した自主研究、ならびに国際標準化事業等の実証研究を実施する。また、「ウォータープラザ北九州」には新しい水処理技術・システムを開発するための「MBRデモプラント」と海水や下水を用いた実験が可能な「テストベッド」があり、これらの活用を会員企業や各種団体に対してPRを行っていく。

 本事業は、北九州市からの委託事業として実施するものである。

 

 


[ページTOPへ戻る]



Ⅳ.造水に関する研修事業(公益)                                                      

 

 本事業は、海外から研修生を受け入れ、日本の廃水再生利用技術、淡水化技術及び水使用の合理化等造水技術についての講義、工場視察等を実施し、日本の技術を移転するものである。

1.造水技術に関する国内外の技術者研修  
 本研修事業は、今までの経験を基に、主に日本の排水処理・再利用の技術紹介を中心とし実施するものである。

(1)海外技術者研修

   本研修は、昨年度までに実施した排水処理・再利用コースを見直し、水資源の有効活用のための造水技術、水の国際標準化等の2つの分野の技術紹介を中心としたコースを設定し、実施する。

   対象国は、 近年、工業発展がめざましく、同時に各種環境問題を抱えていると思われる、アジア、中東、東欧諸国等を主な対象とする。

  •  ① 日本の排水処理・再利用、海水淡水化等の造水技術及び水の国際標準化の講義を行う。

 ② アンケートを実施し、視聴者の要望に応える。

 ③ ウエブセミナーの公開期間は2週間程度とする。

(2)国内向けセミナー

   本セミナーの目的は、企業の工場等で勤務する実務者を対象に、排水処理や水処理に関る指導を行い、技術レベルを向上させることを目的とする。

   更に、個別の企業を対象とする事で、工場等で抱える排水処理問題や対応策についても専門家よりアドバイスを受ける機会を得る事が可能となる。

   国内向けセミナーの実施においては、Webでの講義、並びに対面での講義を可能とし、対面においては、より具体的な現場の抱える課題に対し、生の声を聴きながらアドバイスを行う。

 ① 事前に工場の課題に対応する内容を相談の上、2講座程選択

 ② 事業所単位での実施により、効率的に実務者への教育を実施

 ③ 講義を通じ、工場等での困っている問題等に専門家がアドバイス

 ④ 講義の結果を通じ、別途企業へのアドバイザリー業務の実施も可能

 本事業は、本財団の自主事業として実施するものである。

 


[ページTOPへ戻る]



Ⅴ.その他事業                                                               

 

1.造水技術に関する技術評価   
 日本国内においては、水処理設備向けに高効率、新素材を採用した先進的なシステム、製品等の開発が進められている。しかしながら、これらの先進的なシステム等は、水処理設備に直ちに導入展開する状況に至っていないものもある。そこで、造水技術に関する技術評価制度によってこれらの技術を用いたシステム、製品等の適合性及び実用性の評価を行うことで、当該技術を用いたシステム、製品等を早期に普及促進させることを目的とする。

 本事業は、外部からの委託事業として実施するものである。

 

2.研究開発コンサルタント事業

 本事業は、研究開発についてコンサルティングを実施するものである。

企業が開発中のテーマについて、研究の進め方、調査の仕方、データの取得などについてアドバイスを月1回の実施で行う。

本事業は、会員企業からの委託事業として実施するものである。

 

3.プラント設計支援業務

 本事業は、日本のエンジニアリング会社が受注した海外の化学プラント建設プロジェクトにおける海淡脱塩水の硬度処理設備並びに下水処理設備について設計支援するもので、複数の水処理会社の見積を評価し、発注後の設計図書のチェックを行うものである。

 本事業は、会員外企業からの委託事業として実施するものである。

 

 

4.中東水処理設備診断及びアップグレード支援業務

 本事業は、中東の油田の既設水処理設備の状況を診断し、必要に応じて設備の改修・更新するとともにアップグレード要求に対応した設備追加についての調査業務を支援するものである。

この水処理設備は運転開始後、相応の年数が経っており所定の排水を処理できていない状況にある。一方、発生する排水は年々増加し、さらなる追加設備が必要となっているだけでなく、最近になり処理排水の要求水質が厳しい方向に進んでおり、新たな処理技術の検討も求められている。これらの課題について包括的に調査し、適切な提案をする業務の支援を行う。

 本事業は、会員企業からの委託事業として実施するものである。

 

5.新規事業

 本財団では、従来から外部資金による造水技術に関する調査、研究開発及び支援業務等を実施している。

 令和5年度においても同様に、各種公募案件に積極的な対応を図り、事業の獲得、拡張に努めていく予定である。

 

 


[ページTOPへ戻る]


Ⅵ.会務及び普及・広報事業                                                         

 

1.会 務
(1)評議員会    6月(定例)、3月(臨時)の2回開催する。
(2)理事会     6月、3月の2回以上開催する。
(3)事業評価委員会 2回以上開催する。
(4)会員会     1回開催する。

 

2.造水技術普及・広報事業
 本財団が実施している各事業等について、造水ニュース及びホームページ等を活用して国内外に広く情報発信を行う。また、再生水の工業利用に関する国際標準化のための国内審議委員会活動を通じて、造水技術の普及促進を図る。

 

3.その他
  経済産業省、NEDO、JICA、JETRO、JOGMEC、JCCP等の公募事業については、積極的に提案していく。また、外部機関からの依頼による各種調査等も積極的な対応を図り、国内外における水環境の保全に貢献するとともに、収入増を図る。なお、これらの新規事業の適切な進捗に要する業務の運営管理については、財団の実施する自主事業の弾力的な運営により行うこととする。
 また、本財団で実施する各事業については、それぞれ年度ごとに成果報告書を取りまとめ、その成果の普及に努める。
 


収支予算書(PDF 116KB)

Get Acrobat ReaderPDFファイルをご覧いただくためには、アクロバットリーダーが必要です。
アクロバットリーダーをお持ちでない方は、左のボタンを押してダウンロードしてください。


[ページTOPへ戻る]